1.序
以前の記事でも述べたとおり、MBTIの基礎理論が本来持っているダイナミクスは、心理機能という全く別の発想によって覆われてしまい、表に現れることがない。理論の提唱者自体がこの誤謬に陥ってしまっていることが厄介で、その問題点はMBTIを考える-1において既に述べているとおりである。MBTIにはその「四つの二分法」における特有のダイナミクスがあり、それは心理機能なるものがむりやり付け加えようとするものとは本質的に異なっており、本記事ではその考察を行う。 あるものを「直感」や「知覚」と呼んだり、「感情」や「論理」とただ呼ぶことは、それらを説明したことには決してならない。それらを対置可能なものとして一つの線上に並べたいのなら、ただ漠然と捉えるのではなく、実際にどのような機能的な差異として扱うのかを説明する責任がある。
2.心理機能の順序
MBTIにおける性格とは、ある情報を処理する傾向であるといえる。ある情報を受容すると、それを特定の手段で処理し、結論を出し、反映させる。その過程にまつわる機能の傾向によって、その人の性格が決まる。故にそれぞれの機能は次の時間軸の上に並べられる。(手段→処理→決定→反映)
ある情報に触れたとき、まずJかPという手段を使いSかNの方法で処理する。(J-P × S-N)それらをTかFの方法で決定したあと、IかEの方法で反映させる。という大まかな流れである。これらを具体的に説明することで、なぜその心理傾向が生まれるかが説明できる。
3.本来の心理機能
JとPとの違いは、「過去と現在のどちらを根拠にするか」にあり、J型は過去の情報を元に現在の情報を扱い、P型は現在の情報を元に過去の情報を扱う。このように、J型は「過去のデータを現在の状況以上に重視して未来の予測を作る」。対してP型は「現時点で存在するものを過去のデータより重視して未来の予測を作る」。結果としてJ型は過去のデータを普段から重視し、それを集め自らの理論を強化しようとするだろうし、P型は現在目の前で生じている変化に思いを巡らせる時間が多くなるだろう。
SとNの違いは、「情報処理をどの程度複雑に行うか」であり、言ってしまえばどこまで深く考えるかの違いである。S型は情報を即断する。故にSJ型は、情報を過去の例をもとに即断してしまう。良く言えば決断が早く行動的であり、悪く言えば浅はかで保守的である。また、SP型は、現在の情報(=予測)をもとに現在を即断する。つまり、「何となくそういう気がするから」という理由で即断してしまう。この傾向がSP型を全ての型の中で最も非理性的にする。対してN型はその情報処理に時間を取る。良く言えば物事を深く考え、慎重に行動することになり、悪く言えば考えすぎ、迷いすぎ、ということになる。
TとFの違いは、「判断をどこまで決定してしまうか」ということである。本来全ての物事に確定的な結論を出すことはできないはずなのだが、T型は暫定的にであれ、全ての物事に白黒をつけなければ気がすまない。将棋で例えるならば、最善手を見つけなければ満足できない。一方F型はそれらに優劣や序列をつけるということには執着がなく、曖昧なまま保持しておくことができる。ゆえにT型の発想は、数学、科学、勝ち負けのようにはっきりと決まるものを好み、真理となるものが存在することを信じている。一方、F型の発想は白黒つけられるということを信じていない。T型が勝利したあとに「彼らより我々のほうが強いんだ」と浮かれている一方で、F型の人間は「勝ち負けをつけることに意味はない、勝ったからと言ってより優れているとはいえない」と冷めているはずだ。逆にF型が「この絵は美しい、あの絵も美しい」と眺めている側でT型は、「それで、どっちが権威ある画家の作品か?」「どちらのほうが美しいんだ?」「何の役に立つんだ?」などと、その絵をなんとかして決定しようと焦っていることだろう。
EとIとの違いは、「判断をどのように反映させるか」にある。I型は自分独自のデータベースを構築するためにそれらの処理済みデータを活用する。新しい考えが生まれたときには、自分のオリジナルなアイデアとして見なす。一方で、E型はあくまでデータベースが所属する集団に共通のものであるように見做す。故に処理されたデータは、「すでに存在していたが、自分は未発見だったもの」だったかのように見做される。I型は自分の考えが、他の人の考えより上に来る一方で、E型において自分の考えは、全体的な考えの不完全な一部に過ぎない。だからE型はより多くの情報を集めることで、そのデータベースを出来る限り完全にしたいと願う。一方でI型は、人の考えは全て独立したものであり、人の考えに自分の考えを近づけたいと言ったような同調の傾向が存在しない。I型の論理的根拠は、自分がこれまでに具体的に経験してきた/考えてきた経験に基づく一方で、E型は「みんなが言っていること」の情報を集め、判断することで得たものだ。I型は自分の考えは集団的な正しさよりも正しいと信じている筈であり、一方E型は自分が集団的に(あるいは特定のコミュニティの価値観に沿って)正しいことを誇りに思っているだろう。
これらの心理機能の「度合い」の組み合わせが、その人が情報を扱う方法を形成し、異なった価値観や判断へつながる。
4.複雑さという見方
ここから先は余談だが、これらの心理機能には複雑さ/明快さという違いがあると見ることもできる。
E型は価値観を周りと共有するため、穏当、浅はかな価値観に留まりがちであり、ゆえに明快である。一方I型は自分固有の価値観であり、周りと擦り合わせないため複雑になりやすい。
J型は多くの意味合いで処理され切った過去を第一に頼るため明快であるが、P型は現時点で存在するもののため不安定かつ、より曖昧で複雑になる。
S型は即断するため明快、単純でありN型は複雑である。
T型ははっきり結論づけるため明快であり、F型は曖昧で複雑である。
この考えを適用するならば、ESTJ型は最も確信に満ちていて、行動力のある性格型になるはずだ。他人から何を言われても「集団的な正しさ」を盾にできる強さがあり、自分がそれらの正しさに沿っていることに誇りを持ってもいる。
そして同時に、INFP型は最も不安定だろう。自分自身しか頼りにできるものがない上に、物事について深く考えずにはいられないから優柔不断、しかも何が正しいのか確定させずフィーリングを頼りに曖昧なアイディアの間を彷徨っているし、まだ存在しない世界のことばかり考えている。
これらは逆に言えば、ESTJ型は最も独自性がなく、集団的正しさに無思考で追従するロボットのようなものであるとも言える。指導者が優れているときには優秀な兵隊になれるだろうが、同時にヒトラーの手先としてユダヤ人を虐殺することだって正しいと信じて厭わなかっただろう。
そしてINFP型は、物事を最も深く考える型であり、イギリスの詩人キーツの言葉を借りるならば、「曖昧さ、謎、疑念の中にいながらも、事実や理由に飛びつかないでいられる能力」を持った最も深遠な性格型であるとも言える筈である。
5.結論
このダイナミクスを適用すれば、MBTIの四つの二分法がどこまで性格を捉えられるか、またどのように捉えられるかを説明できる。実際的には、これらの発想を軸に実在する人間やキャラクターからそれぞれの性格型の典型を見つけ、自分の中にESFJといえばあの人、というような基準を作っておくのが、現実世界でMBTIをインスタントに活用するのには役立つのだが。
おまけ
SとN、JとPはえてして自己判断や他者の診断において間違われやすい。しかしSとNはどのくらい彼の思考が単純か?を見れば良いし、PとJは常識的なしっかりものか、それともいい加減な自由人かを考えてみよう。
xNxP ー 複雑な思考回路、可能性を追いかけ続ける、一つの事を成し遂げられない、未来志向、現実的な達成というより果てしなく高い理想を実現したい
xNxJ ー 複雑な思考回路、自分の結論/判断に絶対の自信、未来志向、目標を達成しないと意味がない
xSxP ー 単純な思考回路、適当、知性を感じない、自由、自分に常識があると思っているがポンコツ
xSxJ ー 単純な思考回路、常識的、既存のルールを忠実に守る、頑な、既存のルールを妄信、頼れる (しっかりもの、かつ既存の考えを取り入れるので勉強も得意であり、一般的に「頭が良い」と見なされることも多いが、融通が聞かず、それらの応用や発展は苦手であり、思考回路は単純だ。)