tapanta

考えたこと、詩、などを書く。

天国への扉

 死にたい死にたいと言う気持ちの中に時々、遠くに行きたいという思いが混じるようになった。死にたいという願望は、もともと遠くに行きたいという願望のラジカルな形態で、それが次の形態に移るとしたら、遠くへ行きたいという形になるんだと思う。遠くへ行きたいと言っても僕の希望は東北か東京の下町だった。

 孤独な人間が持つべき趣味は二つあって、最初の一つに選ぶべきは、物を書くことか、ピアノを弾くことのどちらかだ。僕の場合は物を書くことで、これにピアノを弾き始めても良いことはないと思う。ピアノを弾くのと物を書くのは殆ど同じものである。シューマンやグールドの例を出したところで、両立させればただ虚しいというだけの話である。もうひとつは散歩をすること。あるいは出かけること。街に出ながらする考え事は奇妙に内容を変える。部屋という閉鎖は街という閉鎖に変わる。街という閉鎖は部屋と違って自立した閉鎖で、だからその小さな変化には大きな効果があるみたいだ。