ジャック・ラカンがこの閉鎖的な人生に措定した抜け穴。それは欲望に対する無知。そして他者に知を想定するという構図。欲望を基軸に据えるなら、僕や僕のように愚かなラカン主義者たちは彼らにおける反復という概念から必然的に抜け出すことができる。つまり僕らが行き詰まるのは僕らが自身に知を想定する条件に拠るのであって、その前提がありえない限り、僕は行き詰まることがない、できないからだ。
最近はラカンの新訳、「アンコール」を持ち歩くことが多い。それは僕がこの本に知を深く想定してきたからだ。知の想定、それは恋や転移について考えるときでも、娯楽について考えるときでさえ、極めて分かりやすく対象を裁断してみせる。しかもそれは欲望における無知という輝かしいおまけを引き連れて、僕等を自己充足まで導いてくれる。