tapanta

考えたこと、詩、などを書く。

口笛

遠い口笛が
僕を吹いている
君を吹いている
薄いカーテンを揺らしている

存在しないものなのに
僕は時間をじっと見る
存在しないものにどうして僕らは
置いてけぼりにされるんだろう

まだ見ぬ今日が笑い始める
僕らは滑稽だったから
もし滑稽でなかったら
どうして愛し合えただろうか

 

スーパーマーケットを訪れて
袋を三つ手にして帰る
空白ばかり選んで買った
部屋で放し飼いにするために

僕らは分かりやすいのに
僕らの暮らしはわかりにくい
僕らの放した空白が
僕らの声で飛び回る

滑稽な君は
笑いそうになった
でも
それを思いとどまった

 

遠い口笛が
僕を吹いている
君を吹いている
薄いカーテンを揺らしている

僕らは見えない手のひらで
お互いの秘部を隠しあった
僕らは恥ずかしかったから
ここに住むことを許されていた

僕らには声がかけていて
かわりに声になるものがあった
僕らには終わりが欠けていて
かわりにここで終わっていた