tapanta

考えたこと、詩、などを書く。

存在の無根拠性

変態性というのは本質的に性欲というものへの困惑から来ています。人間にとっては正常な性行為ですら、実の所変態です。衆目の面前で性行為する人がいなかったり、動物園で行為を見て気まずい雰囲気になったりすることを考えてみてください。性欲はほかの欲求とは違い、それが存在することの理由を理知的に説明することが出来ません。食欲や睡眠欲の場合、生きるためにはエネルギーが必要だから、それに付随する行為が必要なのだと理解することができます。しかし性欲は無理由の欲求のように感じられるのです。つまり性欲は理解することが出来ず、それゆえに恐ろしいのです。自分自身が、理由も根拠もないものに、しかし実際的に突き動かされることの底知れない恐怖なのです。まさに幽霊のようなものなのです。しかし人間は本来その出自からして無理由なのです。身体は無理由に要求し、人間はそれに応えなければいけないのです。しかし理由を求める人間の思考は、その無理由性に耐えられないのです。だから、これは子供を産むための行為だから、だったり、ただ気持ち良いことはいいことだから、愛だから、などと適当なことを言って理由付けをしようとするのです。つまり現代社会における変態というのは、彼らが理由付けし、正当化できないような水準にある性行為のことを言うのです。下着を盗んだり、全裸を見せつけたりすることで興奮を得る行為が変態的だと感じられるのは、それが曲りなりにも説明、合理化できないものであり、性欲というものの本来の無根拠性を露わにし、その事実が人を不愉快にさせるからです。それは本来肉の塊でしかない人間の身体から目を逸らしている我々が、臓器の画像といった真実の姿を見せられて、グロいと言って拒絶するのと全く同じ状況なのです。