tapanta

考えたこと、詩、などを書く。

不安

 恋は想像的なものである。というのは、それを支えるものが直接的な意味で不安であることを意味している。露骨に言うならば生の不安が性の不安に転嫁される。でもそれは本当にそうなのだろうか?恋している人はその不安は、恋における直接的な不安と認知するだろう。

 恋における最重要要素は未知で、それは関係の中で消化されていく。だから親密な関係は恋を減退させる。性関係の優れているのは、未知の領域を丸々保持できる点にある。つまり人間として見る限り彼女は自分と同じような人間であることが次第に明らかになっていくけれど、性的な決定を信じる限り、女性と男性とは違うと言い切ることができるようになる。

 未知とは不安の領域のことであり、不安の領域とは可能性の領域のことだ。つまりそれは夢を見るための理想的な土壌であり、ゆえに悪夢を見るための理想的な土壌にもなる。恋において彼は普段働かせる推測を普段以上の出力で駆動させる。それは容易に喜びと失望の間を揺れ動く。言葉の一文字が示すニュアンスが運命を握ると感じられるほどまでに拡大される。それは冗談ではない。恋をするとはその経験の中に入るということだ。恋は容易に人を追い詰める。恋は対象を神格化し、その裁きを神格化する。もっといえば裁きがくだされる前の段階を神格化し、そこに居座ろうとする。